建築士カトーのヒトリゴト

改正建築基準法(7)

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建築基準法改正の話(4)
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今日は建築士への罰則強化の話です。

6項目あげた改正のポイントの中で
「建築士等の業務の適性化及び罰則の強化」では

建築基準法第98条から第105条
建築士法第7条、第8条の2、第27条の4、第35条から第38条、業法第49条から52条、宅建業法第79条から第84条

建築士等の違反行為へ罰則等の大幅な強化が規定されています。

施主から違反建築の相談に応じたり、違反建築の指示をしたような場合は懲戒処分の対象となり6点のポイントがつきます。寧殮

ポイントがたまって16点になると業務停止処分となります。運転免許と同じみたいですね。
3物件で違反すると18点で一級建築士事務所としての業務停止と成ってしまうのです。
苦労して取った一級建築士の資格も一瞬で失う可能性があるのです。輦怜

違反建築の相談というと、皆さん私はそのような違反建築の指示はしないと言われると思いますが、大変多いのです。

皆さん気がついていないでしょうが。カーポート、市販の物置などを設置した場合多くのケースで違反建築となっていると思われます。

カーポート、市販物置を建てれば建ぺい率、容積率の加算の対象となります。建ぺい率、容積率一杯の物件はそこにこれらを建てれば基準オーバーとなります。すなわち建築基準法「既存不適格物件」と成るわけです。聯
しかもアルミのカーポートはホームセンターで売られているものは殆ど違反建築物です。

それは、法22条地域内のカーポートやバルコニーに設置するアルミフレームの屋根に取り付けられているポリカーボネートやFRPといった樹脂製の屋根材が問題となります。

住宅がある程度立ち並んでいるような地域では大抵、法22条の地域に指定されていますが、この地域内で建物を建てる場合はその建物の屋根やひさしを不燃材料で仕上げなければなりません。

樹脂製の屋根材は一般的に不燃材料ではないので使用はできませんし、もし使用している場合は完了検査までに屋根材を撤去しなければ完了検査に合格し検査済証の交付を受ける事が出来ません。

この違法状態のカーポートやバルコニーの屋根は実際いたるところで見受けられます。これらを設置しても社会的通念上、余程非常識なものを除いては行政指導は行ってはいない様です。しかし、完了検査時には厳密に審査され違法の指摘を受けます。
その為、多くの方は建築完了検査後にこれらを設置します。
この手法を建築士が指導すると、「違反建築物の相談にに応じたり、違反建築物の指示を出していた」ことに該当してしまう訳です。もちろん、建築士は懲戒処分の対象となり6点のポイントがつきます。

ロフト、小屋裏収納をご希望される方も多いのですが、それらは天井高さ1.4m以下であることが決められています。1.4mを超えると階数に数えられ、2階建てのつもりが3階建てと認定されてしまいます。

そこで、「完了検査後天井をもう少し高く上げてほしい、当初からそのつもりで1.4mの所で天井を仮設で作っておいて、検査後撤去してほしい。」という依頼は良く聞く話です。

たとえ3階が収納庫のみでも、3階建てにすると、そのような3階建て相当の構造にしなければなりません。(木造建築の場合、2階建て以下と、3階建てと構造仕様の規則が大きく変わります。)
当然相当な費用もかかります。
「小屋裏収納なら通常の部屋として使うわけでないからそこまでしなくてもいい、1.4mの所で天井を仮設で作っておいて、検査後撤去してほしい」という考えに成るわけです。

その施主の希望に応じると「違反建築物の相談にに応じたり、違反建築物の指示を出していた」ことに該当してしまう訳です。現に身を守るためにも今後建築士は厳しくお施主達に、法順守を説かなければなりません。

実際の事例です。
話は少し違いますが、ある施主が1.4m以上の小屋裏収納を希望したので、「3階建てに成ってしまいます。構造も違ってきます。」と建築士と工務店が説明したところ、検査後に作ってくれと頼まれ、完了検査後、その通りに1.4m以上の天井高の小屋裏収納を造った事例があります。

悪意のあるこの施主は、「確かにお願いしたが、3階建ての構造をした上で、1.4m以上の天井高の小屋裏収納ができると思っていた。」と裁判を起こしました。

建築士も工務店も違法なことと知っていたわけです。施主は構造的問題を違法建築、依頼と違う建物だと訴えたのですが、判決では「施主側が、専門知識を持っていたとは言えない。工務店は建築基準法違反について理解していた。施主に設計変更の受注拒否ができた。施主の指示が「指図」と言えるほど事実上の強い拘束力を持っていたとはいえない」と判決がでました。違法を指示され、相談に応じた建築士、工務店は結局、工務店が1062万円、建築士が811万円の賠償を命じられたのです。聯怜

この判決では、施主の希望する3階建ての構造に建物を造らなかったことへの違法性を言うのではなく、「違法建築物を指示されても、設計変更の指示が不適格である場合、これに応じてはならない」という点を言った事例です。

私は、これからの世の中では、施主に対し、違法建築物を誘導するような設計提案をしないはもちろん、むしろ、 「高いコンプライアンスの意識をもつことが、高い信頼がもてる会社」と評価できると考えて行くべきだと考えます。


今回で、建築基準法改正に伴う話はひとまず終了します。
本日また、建築基準法改正のセミナーに参加してきます。
何か情報があればまたお話ししたいと思います。

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