建築士カトーのヒトリゴト

マンション仮処分申請

| | コメント(1)

建築基準法で震度7が安全か


             

今日、朝のニュースをインターネットで確認中、一つのニュースに眼が止まりました。

ここ浜松市で進んでいる『分譲マンションの建築計画に近隣住民が建築差し止めの仮処分を裁判所に申請した』というものです。

詳しく計画会社等が出ていましたが、ここでは差し控えます。

浜松市城北2丁目に分譲する地下1階地上5階延べ床面積5251㎡52戸の分譲マンションだそうです。施工会社はまだ未定となっています。

仮処分申請は「城北1・2丁目住民の命を守る会」で、団体代表は細野透さんと書かれています。

私は申請の内容に注目しました。

内容は、
「建基法レベルの耐震性では東海地震で崩壊して、近隣住民だけでなくマンション住民の人命も危うくすると主張している。守る会の資料によると、敷地周辺は東海地震で震度7が想定される地域であり、敷地は斜面の上部にあって地盤が弱い。建物と地盤が震度7に耐える力を備えていることを計画会社が証明しない限り、マンションを建ててはならない」というものです。

また、裁判所が仮処分の申請を退けた場合には、近隣住民は事業主を相手取って、マンションが地震で倒壊した際の補償を約束させる訴訟を起こす予定だそうです

細野透さんを調べ得てみると、建築&住宅ジャーナリストで、元日経アーキテクチャアの編集部編集長だったという、建築に大変詳しい人のようです。

この仮処分の申請の内容を解説すると、

建築基準法に見合った建物、建築基準法上の安全基準で設計され建築確認申請が通っても、事業主は今度来ると言われる東海沖地震に(震度7が想定される地区もあります)耐えられる事を証明しなさい、しない限りマンションの建築は許可できない。ということです。

建築基準法は「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」ために建築物の敷地、構造、設備及び用途の最低基準を定めています(1条)。

しかし、同法は、上記のように、「震度6強」で建物や敷地が崩壊しなければよいことを目標にしているだけで、「震度7」ではどうすればよいか、具体的な目標は書かれていません。

すなわち、建築基準法に合致した建物、建築基準法の許可を取った建物でも、 震度換算すると概ね「震度6の強」に対応する基準と成っているわけです。

「震度7」が来る、と警告されている地域に、「震度6強」でギリギリ大破・崩壊しない建物を設計して建てても、現行の建築基準法に照らせば合法になります。

では、その建物が「震度7」でどうなるか。もちろん、資金さえかければある程度までの「震度7」の揺れに耐えられる建物の構造設計・施工は可能でしょうが、「震度6強」対策を満たせば、事業者の考え方次第でどうにでもできる可能性があるわけです。 というのが表面上言い分です。

細野さんたち住民団体の主張は、この大地震の想定震度と現行法が求める耐震性能の間にある矛盾を、鋭く突いているところに注目すると記事には書かれています。そうです、決して日照や騒音をやり玉にして建築反対と起こしていないのです。

新しい手法で建築反対仮処分を申請したのです。

阪神淡路大震災では多くの建物が被害に遭いましたが、それは殆ど古い建物か、施工に問題があった建物と聞いています。

特に私の専門分野の住宅でいうと、新築住宅で当時大きいな被害を出した家は2件だけだと報告を雑誌で見ました。

視察に行った、能登半島地震でも大きな被害を出した住宅の隣で、新築と思われる建物はビクともせず建っており、住居者も普通に生活しているようでした。震度7地区でです。

個人的には今の建築基準法上合致する建物は十分震度7に耐えると考えています。

しかも、今回のニュースには出ていませんでしたが、建築基準法には地域係数というものがあって、静岡県は1.2となっています。すなわち、他県の物件では構造計算上で1.0とするところ、静岡県の物件は構造計算上1.2倍に強度を上げているわけです。

単純に、阪神淡路地方の物件とも比較しても、当時から県内の建物の方が1.2倍の強度が当初設計で見込まれています。あの地震が当時県内に襲ってきても、同じ被害棟数には成らなかったはずです。

また、気象庁の予想震度を見ても、震度6の強地区と震度7地区の判的の違いは、軟弱地盤地域かそうでないかが大きくかかわっています。

設計では、地盤種別も加味しています。1種地盤2種地盤3種地盤と3分類あります。
簡単に言えば、1種地盤が固い地盤、2種地盤が普通地盤、3種地盤が軟弱地盤です。

東海地震でこの浜松地区で、震度7が予測される地区は、設計上当然3種と判断されていると思います。ですからこの地区の建物はここでまた、構造上安全係数が掛けられます。

一概に震度6の強地区と震度7地区、他県と本県の物件を十把一絡げ比較はできないと私は思います。

では、保証をだして建築するのかとなると、事業主は難しいでしょうね。
今回の仮処分申請は、住民の日照や音といった、今までのような安眠の生活を脅かすとしての仮処分申請と異なることが注目するところです。

建築基準法の構造に、安全係数を2重に掛けて設計して建てても構造上不安とされ、裁判では負けるのか
今後どうなるか、見守っていきましょう。

コメント(1)

最近訴訟が行われた道路はさんだすぐ北側に ヨシコンと言う静岡の会社が 軟弱地盤に杭をうたないで8階の学生マンションを 建てようとしている山を削って造成しているが湧水がでて土砂崩れしている 認可がおりるのをひたかくしにして 一部地元住民に連絡しなかった その為 今 大変な事になっている 軟弱地盤に 地盤改良もせずに大丈夫なのか 安価に建築しようとしている 大丈夫なんでしょうか?この会社 住民は 倒れないマンションを建ててほしい 切り崩した山も一部崩れて土嚢をつんでいる それも道路側です
きけんです 訴訟をした土地のすぐ横です 細野さんに相談したいです

コメントする

カレンダー

<   2008年1月   >
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

アーカイブ